いつの間にか空は晴れ、太陽が山の影をコースに焼きつけている。
気まぐれな雲が、ぽかりと上空に現れては東へ去っていく。
ビブラートの効いたエキゾーストノートを響かせながらアップヒルにさしかかる。
大好きなマウンテンクライムに入った。標高は1900ｍ。
マシンを左に寄せ、土手すれすれに左膝を突き出しながらヘアピンをクリアする。
フロントが僅かに浮いたかと思うと、マシーンを右へ傾ける。つづいてコースは右へ緩やかにカーブする。
左側にパーキングが見えてきた。観衆がエキゾーストの方を振り返る。
クリッピングポイントを奥に取りながら、少し右に尻を落とし上半身を軽く起こす。
コースの右は牧草の傾斜地だ。視界の隅に緑が目に入る。タイヤも路面を良く捉えている。
マシンを右側端ギリギリまでもってゆき思い切り左へタックする。
壁すれすれに左膝を出す。レブリミッターは1万回転。アップヒルの短い直線で3速へシフトアップ。
躰を伏せて前方を見る。正面に山肌が迫ってくる。
一瞬一瞬が信じられない速さで瞳を動かしながら、次々に目標を探す。
ブレーキングポイントは判別しにくい木、草、ガードレールを利用する。
フルブレーキのまま2速にシフトダウンして、一気に右へ切り返す。
さらに1速へシフトダウン。ヘアピン頂点の手前10ｍまでくると再び強くブレーキを握り、左へタックする。
マシンは極端に狭い半径で旋回し始める。
ハードブレーキングとアクセルを開けることを繰り返しながら青い空に向かってフルスロットルにした。
NNTF
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