旅のはじまりはモーターサイクル


大学4年生のとき、親友から卒業旅行を誘われた。

バイクにテントを積んで四国を一周するという魅力的な「キャンプツーリング」だった。

 

当時、バイクに乗ると言ったらレーサーレプリカで"峠を走る!"または"サーキットを走る!"

とにかく全速力で走りきることしか頭になかったので、テントを積んで走るという発想は無く、青天の霹靂だった。

 

バイクで旅をする?

自分一人ではそのような考えは生まれなかったし、行動も起こさなかっただろう。

 

就職活動も終わりを迎え、無事に就職先が決まったこともあり、ひと区切りついた夏に卒業旅行に出発することになった。

 

しかし、はじめてのバイク旅は、とても苦い思い出となった。

 

フェリーで四国に上陸した初日の午後、居眠り運転をして単独事故を起こしてしまった。

 

前走の親友は、ミラー越しに速度が一定に定まらない自分の走りに違和感を感じていたらしい。

その直後、道路わきの花壇に衝突し、車体と身体は前方宙返りをして地面へと叩きつけられた。

 

救急車で病院へ搬送され、バイク旅は僅か2日目にして終了となってしまった。

 

親友には本当に申し訳ないことをしたと反省している。

 

いま振り返ると、圧倒的な経験不足だったと思う。

 

はじめてのキャンプツーリングに不慣れなテントの設営、眠れない夜、そして睡眠不足。

 

はじめて走る道に不慣れなペース配分、寝不足、そして連泊ツーリングの経験不足。

 

バイクはその場で廃車となってしまった・・・。

 

卒業前の冬に、仲間内で"大型バイクの限定解除"の話題が持ち上がった。

 

"1996年の法改正で大型自動二輪免許が教習所で取得できるようになるよ。近所の自動車学校で教習生を募集するらしい"

 

バイク事故の後、外科手術も終え、骨折からは復活していたのだが、 怖くて2輪は降りてしまっていた。

 

それでも親友は熱心に誘ってくれた。

 

仮にいま大型バイクに乗らないとしても、免許だけでも取得しておいた方が良いよ!

取得に掛かる費用は自動車学校が負担するからチャンスだよ!と。

 

果たして、教習生としての採用が決まり、

150h超の猛特訓の甲斐もあって、大型自動二輪免許を取得した。

 

いま自由に大型バイクに乗れているのは、将来を見越してアドバイスをくれた親友のお陰である。とても感謝している!

 

大学を卒業した後は、四輪に転向し、新たな社会人生活を送っていた。

 

学生から社会人へ 二輪から四輪へ

そんな流れに乗っていたのかもしれない。

 

バイク事故から1年半後、高校時代の友人から2ストのレーサーレプリカ250ccを譲り受けるチャンスが巡ってきた。

 

そして、大学時代の親友がもう一度、バイクの世界を誘ってくれた。

 

嬉しかった。

もう一度バイクに乗れるのかな?

とても不安だったけど 、そんな不安を払拭するかのように、親友はツーリングに誘ってくれた。

 

そして全国をまわるバイク旅がはじまった。

 

バイク事故から7年の歳月が流れ、

再び、四国の地を踏んだ。

 

事故現場の道路わきの花壇を確認し、止まっていた時計を進めるべく、

前進し、卒業旅行で成しえなかった「キャンプツーリング」を再開した。

 

テント泊縦走ならではの長距離ツーリングの楽しさ。

自由に決められるルートと宿泊地。

夜の宴会の楽しさ。

プライベートな空間で過ごすテント泊の快適さ。

 

気の合う親友とプライベートな空間で過ごす時間。

好きなところを走り、好きなものを食べ、テント横の愛車を眺めながら、好きな酒を酌み交わす幸せ。

全てを自由に決められる「キャンプツーリング」の喜び。

 

バイクで旅をする楽しみを教えてくれた親友には、とても感謝している。

 

ありがとう!


旅のはじまりはモーターサイクル。

 

自由への扉をひらこう。